妖精データベース
スプリガン
Illustrator : SHIZ
- 名称 スプリガン(Spriggans)
- 分類 守護の妖精
- 生息地 古代の遺跡や砦、人里離れた古民家
- 特徴 戦闘時に巨大化、嵐を起こす、地面を揺らす
- 体長 平常時は120cm程度、巨大化時は最大で約10m
妖精の守護者は嵐を起こし地を揺らす。
スプリガンとは―妖精達の守護者―
スプリガンは、妖精達を外敵から守る役割を持った、強力な妖精だ。彼らは、動物や人間から攻撃されている妖精を見かけると、巨大な姿に変身して妖精を守り、敵に対しては報復を行う。
スプリガンは他の妖精たちから頼りにされている。
中にはスプリガンの威を借りて人間にちょっかいを出すやっかいな妖精も存在するそうだ。また、スプリガンはイングランドのコーンウォール地方で主に言い伝えられてきた妖精で、イングランド発祥の他の妖精と同様に、普段は人間にいたずらをしながら暮らしているという。
妖精をいじめる者は許さない!巨大化し嵐を起こす
普段のスプリガンは、ドワーフのように人間よりも小さくて醜い姿をしている。しかし、彼らは他の妖精が外敵から攻撃されていると見るや否や、巨大化し、その妖精をいじめた者に罰を与えに行く。
巨大化したスプリガンは、筋骨隆々の身体をしており、普段の様子からは想像できない鬼のような形相をしている。誠心誠意謝れば、周りの地面を揺らす程度で許してくれるが、機嫌が悪かったり、妖精への仕打ちがあまりにもひどかったりした場合には容赦なく人間を吹き飛ばしてしまう。
さらに、怒りが頂点に達すると雷や嵐を発生させることも。ここまで来ると、もう誰にも止めることはできない。スプリガンの気の済むまで暴れさせるしかないだろう。
このように恐ろしい一面を持つスプリガンであるが、妖精達に危害を加えなければ、攻撃をしてくることはないから安心してほしい。ただし、もしもスプリガンを怒らせてしまったのならば、水の中に逃げ込むのが良い。彼らは泳ぐことが非常に苦手で、水の中までは追ってこられないからである。
あらゆるものを守るスプリガン
スプリガンが守るのは妖精達だけではない。彼らは自分たちの暮らす土地や、先祖から受け継いだ遺跡や宝物をも外敵から守っているのだ。
このように、スプリガンがその同胞や貴重な遺跡などを守る力強さは、シンボルとして受け継がれていることがある。スプリガンの名を冠すチームが、世界中の遺跡を守るために戦い抜く物語「スプリガン」が小学館より刊行されている。これを読んで、物語の登場人物にスプリガンの姿を重ねてみても良いだろう。
ちなみに、スプリガンは基本的に人間を守護することはなく 、土地開発のために森林や遺跡を破壊する人々と敵対関係になることが多い。ただし、妖精達を愛し、尊重する人間を守ろうとすることはごくまれにあるそうだ。日ごろから身近な自然に親切にしていると、思わぬところでスプリガンからの恩返しがあるかもしれない。
元は巨人だった?
「スプリガンは、もともとの姿は巨人であった」という説がある。はるか昔、コーンウォール地方には巨人達が住んでいた。しかし彼らは、土地に侵入してきたブリテン人(ブリトン人)によって滅ぼされてしまう。その時の巨人達の幽霊がスプリガンになったというものだ。
スプリガンは、巨石が立ち並ぶ環状列石(ストーンサークル)の周辺で頻繁に目撃されるのだが、この環状列石こそ、巨人であった頃の彼らが造った遺跡であると考えられている。スプリガンは今でも自分達の大切な遺跡に留まり続け、人々によって荒らされることのないようにと見守っているのかもしれない。
かつて巨人だった者たちは、ずっと巨人の姿でいると目立ってしまい、人間から必要以上に恐れられたり、敵意を抱かれたりする可能性があることに気づいた。さらに、巨人の姿だとその分エネルギーも多く消費してしまうので、身体の大きさを自在に変える能力を身に着けて、妖精として生きていく道を選んだのだ。
このように、スプリガンはかつて存在した巨人の系統であり、今もなおその小さな身体に強大な力を保ち続けているのである。
― 関連書籍 ―
- ポール・ジョンソン著/藤田優里子訳(2010)『リトル・ピープル』― 創元社
- 荒俣宏監修(2018)『水木しげる 日本の妖怪・世界の妖怪』― 平凡社
- キャロル・ローズ著/松村一男監訳(2014)『世界の妖精・妖怪事典』― 原書房
- 水木しげる(1996)『カラー版 妖精画談』― 岩波新書
- 村君江(1987)『妖精の国』― 新書館
- 草野巧著/シブヤユウジ画(1999)『妖精』― 新紀元社