妖精データベース
ノーム
Illustrator : SHIZ
- 名称 ノーム(Gnome,Nome)
- 分類 地を司る四大精霊
- 生息地 地中深くや岩の中、木の隙間
- 特徴 地中を自由に移動、鉱脈を守る、手先が器用
- 体長 15cm前後
工芸を愛し鉱脈を守る大地の精
ノームとは ―地を司る四大妖精―
ノームとは、地・水・火・風という四大元素のうち、地を司る妖精である。ノームは主に地面の中で暮らしていて、地中ではものすごい速さで移動することが出来るという。
ノームにとっての土は、我々にとっての空気のようなもの。土がノームの行く手を遮ることはないのだ。さらに、地面の中だけでなく、岩の中や木の中で暮らしているノームもいる。人間によく目撃されるのはこのような岩や木に暮らすノームだろう。
また、彼らは非常に賢いので、金や銀などの貴重な鉱脈の在処などをよく知っており、それらを守ることにどうやら使命感を持っているらしい。人間とは友好的な関係で、作物の育て方などのアドバイスを行う親切なノームもいる。時には木や草花に活力を与え、成長を促す魔法をかけてくれることも。
19世紀の中頃には、ガーデニングにノームの力を拝借しようと考えた人物が、庭先に飾るノームの人形「ガーデン・ノーム」を製作した。このガーデン・ノームがきっかけとなり、園芸を愛する人々の間では、ノームは庭の守り神のような存在として認識されている。
もしかしたら海外などの家屋の庭で不思議な小人の置物を見たことがあるかもしれないが、実はあれこそがノームをイメージした飾り物だったのだ。
繊細な作業を好むアーティストの一面も
ノームは、身長15㎝程の老人の姿をした小人である。大きな特徴は、赤い三角帽子をかぶっている点や、豊かな髭を生やしている点だ。
炭鉱夫のような恰好で人間の前に現れることが多く、ツルハシなどを持っていることもある。器用な手先もノームの特徴の一つだ。ノームが住むと言われる森の中では、彼らが作った非常に精巧な工芸品が見つかることもあるという。
このような特徴から、地中に棲む鍛冶屋の妖精ドワーフと間違われることも多い。寿命は200年から300年と非常に長命で、中には400年生きたノームもいる。
地中では、様々な妖精が暮らしている。
見分けられる?ノームの家族
ノームはその見た目から男のノームしかいないと思われがちだが、実は女のノームも存在するし、子供のノームも存在する。
女のノームは男のノームと同様に髭を生やしているため、顔だけ見ても性別は分からない。しかし男は赤色の帽子をかぶり、女は緑色の帽子をかぶっているため、帽子を見れば容易に男か女かが分かるだろう。女のノームは「ノーミード」や「ノーミーデス」と呼ばれることがある。
結婚をしているノーミードたちは皆、ルビーとエメラルドで飾られた靴を大切に履いている。しかし、靴を彩る宝石が、鉱脈に詳しい夫からの贈り物なのかは定かではない。そのことをノーミードに訊ねても、彼女たちは照れくさそうに口ごもってしまうのだ。
また、子供のノームは両親と比べるとやや小さいが、もともとノームの体長は大きくないので、両親と見分けるのは非常に難しい。その上、ノームは寿命が長いため、100歳までは子供であるという点も両親と子供を見分けるのが難しい理由の一つである。
ノームも悩む森林破壊
森林破壊は人間だけでなく、ノームにとってもたいへん大きな悩みの種である。ノームは深い森などの自然豊かな場所に住んでいるので、森林破壊が進むことで彼らは自分たちの住処を奪われてしまうのだ。
このようにして森から追い出されたノームの中には都市で暮らし始めるものもいた。しかし、都市はアスファルトで覆われているため、地中に潜ることができないノームも多くおり、彼らの生活に大きな支障をきたしている。ノームが地中で暮らしにくくなった結果、大地の活力が失われつつあると危惧する声もある。
また、ノームは非常に速く地中を移動するため、まれに地下の水道管やガス管と衝突事故をおこしてしまうこともあるという。地を司る精霊として大地や森を守り、古くから人間にも友好的に接してくれたノームたちを守るためには、森林破壊を食い止め、ノームの居場所を守ってやる必要があるだろう。
このまま森が失われていくと、ノームたちの生活はますます厳しくなるだろう。
Tips
「ノーム(Gnome)」という呼び名は、ギリシャ語で「地に住む者」を表す「genomus(ゲノムス)」から付けられたと考えられている。
また、「知識」の意味を持つ「gnosis(グノーシス)」からとられたという説もある。
― 関連書籍 ―
- エドゥアール・ブラゼー著/松平俊久監修(2015)『西洋異形大全』- グラフィック社
- ポール・ジョンソン著/藤田優里子訳(2010)『リトル・ピープル』- 創元社
- トニー・アラン著/上原ゆうこ訳(2009)『ヴィジュアル版 世界幻想動物百科』- 原書房