妖精データベース

グレムリン

Gremlin
グレムリン

Illustrator : にらろーる

  • 名称 グレムリン(Gremlin)
  • 別名 スパンデュール
  • 分類 幻想生物
  • 生息地 世界各地の民家、飛行場、工場
  • 特徴 機械の発明や修理、破壊が得意
  • 体長 手のひらサイズ~成人の膝の高さ
パイロットたちの頭痛の種は、
悪戯好きなハイテク妖精

グレムリンとは―いたずら好きな発明家―

グレムリンはとても器用で頭の良い妖精。機械いじりが大好きで、気象学にも詳しい発明家として妖精達の中では有名だ。しかし、そんな知的なイメージとは裏腹に、乗り物や電化製品にいたずらをしては故障させ、人々を困らせるというトラブルメーカーな一面もある。

いたずら好きなグレムリンは、「ピクシーたちと遠い血縁関係にある」、または「ドワーフやゴブリンの親戚だ」、「ボガートの一種だ」などいくつかの説があるが、見た目はそこまで彼らと似ていない。

グレムリンの体色は白や黒、ブラウンなど様々であり、まれに緑色や紫色の個体も確認されることがある。彼らの中には体毛を生やしているものもいれば、手足に水かきがついたものもいて、姿は多種多様だ。加えて、うさぎのような長い耳や、角が生えているのもグレムリンの大きな特徴。体長は手のひらサイズから50cm前後(成人の膝の高さくらい)という記録が多い。

また、グレムリンたちは空を飛ぶことに強い興味があり、中にはパイロットに憧れを抱いているものも少なくないという。そのため、ぶかぶかのパイロット帽子や飛行ジャケットを好んで着用していることもあるが、それらは飛行機のパイロットからこっそり盗んだに違いない。

いたずらのターゲットは機械!頭脳派な妖精

グレムリンは、世界各地の民家や工場など様々な場所に住んでいる。他の妖精と同様に物を隠すいたずらなども行うが、賢い彼らは自動車や飛行機などの複雑な機械を故障させるいたずらを好みやすい。特に飛行場に住むグレムリンは悪質で、飛行機の運航を妨げる危険ないたずらをすることも……。見かけた場合は要注意だ。

ちなみに、1984年に公開された映画『グレムリン』では、信号機を全て青に変えて交通を混乱させたり、除雪車を運転して民家に突っ込んだり、器用にチェーンソーを振り回したりと大暴れするグレムリンたちの姿が描かれている。

映画に登場するグレムリンは、モグワイという珍しいペットから分裂して生まれた凶暴な生物であり、妖精とは異なる存在だ。しかし、持ち前の高い知能で機械類を操り、時にはわざと故障させて人々をパニックに陥れるところは妖精のグレムリンを思い起こさせる。

私たちを慌てさせ、イライラさせるいたずらが大好きな、困った妖精グレムリン。しかし時には気まぐれに、人々のちょっとしたひらめきの手助けをすることもある。過去には科学者に発明の助言をしたり、職人見習いを教育するなど、人間と友好的な関係を築いていたグレムリンもいるのだとか。

やっかいな「グレムリン効果」は飴玉で防ぐ!

飛行機を故障させるグレムリンは、パイロットたちから嫌われている。グレムリンの被害が報告されるようになったのは1920年代のことで、イギリス空軍が最初に被害を受けたという。グレムリンのいたずらは、メーターを狂わせたりエンジンを不意に止めたり、機体に細かな穴を開けてしまったりと、どれも飛行機が墜落しかねない大変危険なものである。

これらの故障は「グレムリン効果」と呼ばれ、パイロットや整備士の中には軍の士気を下げないために、自分のミスをグレムリンに押し付ける者もいた。

イギリス空軍で確認されたこのグレムリン効果は世界中に広まり、航空関係者たちを悩ませた。しかし最近では、グレムリンの仕業と思われる航空機のトラブルは大幅に減少している。最近の飛行機は非常に高精度に設計されているうえに、少し故障した程度では運航に支障はない。

さらには、非常事態を想定した厳しい訓練を通してパイロットの腕も格段に上がっているため、グレムリンたちも手を出しにくいようだ。

ちなみに、グレムリンから身を守る昔ながらの方法として、機内や整備場に飴玉を置いておくというものがある。グレムリンは大の飴玉好きなので、飴玉に気を取られて飛行機にいたずらをしなくなるそうだ。飛行機に乗る時にグレムリンのいたずらに巻き込まれないか心配な場合は、袋いっぱいの飴玉を持ち込むことをおすすめする。

Column

グレムリンが登場したのは20世紀?

グレムリンは、他の妖精と比べると発見されてから日の浅い妖精である(といっても約100年間経過しているが)。彼らは飛行機の他にも、自動車や家電など、機械類全般にいたずらをする妖精として語られてきた。

一見すると、妖精界の中では新入りのようにも思えるが、実は昔からあらゆる所にグレムリンは存在していたのだ。「一家に一体は必ずグレムリンが住み着いており、気まぐれに家電を壊しては面白がっている」とも言い伝えられているほどだ。

しかし、彼らは頭が良いだけでなく、好奇心旺盛だったので、当時の最先端技術の塊であった航空機にいたずらをしてしまい、悪い意味で目立った結果、「グレムリン」という名前が付けられた(※)のである。

グレムリンの名の由来は、アングロ・サクソンの古い言葉で「悲しみ」や「苛立ち」を表す「gremian」からであるとか、文学者のグリム兄弟の「グリム」(憂鬱という意味もある)と、ビールの商品名「フレムリン」を合わせた造語であるなど、いくつかの説がある。

グレムリンたちは現在でも自動車や家電などの動作を相変わらず邪魔し続けているが、最近はコンピューターの調子を狂わせる技術も身に着けたらしい。パソコンの電源がいきなり切れる、カーソルが勝手に動くといった日常的な不具合から、思わず笑ってしまうようなゲームのバグまで、心当たりのある人はきっと多いはずだ。

このように、グレムリンは技術の進歩に合わせて、より新しい機械にもいたずらをすることが出来る、極めてハイテクな妖精なのである。

― 関連書籍 ―

  • エドゥアール・ブラゼー著/松平俊久監修(2015)『西洋異形大全』- グラフィック社
  • キャロル・ローズ著/松村一男監訳(2014)『世界の妖精・妖怪事典』- 原書房
  • 水木しげる(2008)『カラー版 妖精画談』- 岩波新書
  • 草野巧著/シブヤユウジ画(1996)『妖精』- 新紀元社
  • 井村君江(1999)『妖精とその仲間たち』- 河出書房新社
  • 健部伸明(2008)『知っておきたい 伝説の魔族・妖族・神族』- 西東社
  • K.ブリッグズ著/井村君江訳(1991)『妖精の国の住民』- ちくま文庫
  • 井村君江(2008)『妖精学大全』- 東京書籍

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