妖精データベース

ザントマン

sandmann
シルフ

Illustrator : 未勇

  • 名称 ザントマン(Sandmann)
  • 分類 人型の小妖精
  • 生息地 砂が豊富な場所、人の枕元
  • 特徴 人間を眠らせる
  • 体長 大人の人差し指程度
眠りのサンタクロース?
心地良い眠りを届ける「砂男」

ザントマンとは―人々を眠らせる砂男―

ザントマンは、魔法の砂で人々を眠らせる妖精だ。ザントマンの「ザント」とは、ドイツ語で砂を表す「Sand(ザント)」。英語圏だと「サンドマン」と呼ばれ、これはそのまま「砂男」という意味である。

ザントマン像のイメージ画像
ドイツで放送されていた子供向け人形アニメ「僕らのザントメンヒェン」に登場する、ザントマンを模して造られた像。
(出典:Adobe Stock)

ザントマンは、物腰柔らかそうな老人の姿をしているものが多い。身長は10cmくらいとかなり小柄だ。 いつも三角形のナイトキャップをかぶり、絹で仕立てたパジャマのようなブカブカの服を着ている。

また、自分が近づいているのを気づかれないように、足音が響かないスリッパを愛用しているものも少なくない。彼らは、魔法の砂が入れてある袋を常に持っていて、自分の体重よりも重い大量の砂をせっせと運んでいる。

服装と砂袋のせいか、最近はサンタクロースと間違われることもあり、ザントマンは少し不満を抱いているらしい。

寝不足気味の現代人のために

ザントマンは、いたずら心から人を眠らせる場合もある。しかし彼らは、睡眠不足の現代人を心配しており、寝不足の人を気遣ってわざわざ眠らせることがほとんどだ。

枕元のイメージ画像
枕元はザントマンがよく現れる場所だ。
(出典:Adobe Stock)

時々、ザントマンが目に砂を振りまいても、眠気に抵抗してなかなか寝付かない人もいる。「勉強や仕事が終わらない……」、「今夜中にゲームをクリアしたい……」などなど、眠い目をこすりながら作業を続けた経験のある人は多いことだろう。

そんな時、ザントマンはその人のまぶたの上に座り込んで、何とか目を閉じさせようと奮闘する。もちろんこの行動も意地悪ではなく、ザントマンの親切心からだ。

ちなみに、ドイツなどでは夜更かしをする子供に対して、「早く寝ないとザントマンがやってきて目玉をとっちゃうよ!」と言って寝かしつける習慣がある。ただし、ザントマンが実際に目玉を奪うことはなく、この話は子供を早く寝かしつけたい親たちの作り話である。

入眠効果絶大!ザントマンの魔法の砂

袋のイメージ画像
ザントマンが持つ砂袋のイメージ。彼らはこのような袋を肌身離さず持ち歩いている。
(出典:Adobe Stock)

ザントマンが使う魔法の砂には、たいへん強力な睡眠導入効果がある。この砂は常にキラキラと輝いていて、様々な色がついている。

ザントマンは、平均して3粒くらいの魔法の砂を人の両目に振りかけるが、この3粒だけで大抵の人は10分後に眠気を催し、30分後には眠りについてしまう。魔法の砂がもたらす眠りはとても穏やかであり、疲労回復効果もある。さらには、楽しい夢や幸せな夢もみさせてくれるというオマケつきだ。

だが、魔法の砂が何からできているのかは分からないままである。ザントマンからしてみれば、魔法の砂のことはトップシークレットなのだ。

Column

ザントマンを呼びたい人へ

「明日は重要な会議やテストがあるのに眠れない」といった時に、ザントマンを呼びたくなる人もきっと多いはずだ。ここでは、そんな人たちのためにザントマンを呼び寄せる簡単な方法を紹介しよう。

ザントマンを呼び寄せる方法として効果的なのは、彼らの好物を用意することである。妖精の中には自分たちの働きに対して対価を求めるものが多い。ザントマンもその傾向にあり、報酬をくれる人間の願いならば、しっかりとかなえてくれる。ザントマンは牛乳を好むので、報酬としてベッドの傍らにコップ一杯分の牛乳を置いておくとよい。

部屋に現れたザントマンは、牛乳を用意してくれたお礼として、心地よい眠りにつくために丁度良い量の魔法の砂を目の中に振りまいてくれるだろう。

Tips

スウェーデンやデンマークでは、ザントマンによく似た眠りの精「オーレ・ルゲイエ」の存在が知られている。彼らは、よい子の目に魔法のミルクを垂らしたあと、カラフルな絵が描かれた傘を差しかけて楽しい夢を見せるという。

― 関連書籍 ―

  • エドゥアール・ブラゼー著/松平俊久監修(2015)『西洋異形大全』- グラフィック社
  • クリエイティブ・スイート編(2010)『妖精・精霊がよくわかる本』- PHP研究所
  • ポール・ジョンソン著/藤田優里子訳(2010)『リトル・ピープル』- 創元社
  • 水木しげる『カラー版 妖精画談』(1996)- 岩波新書
  • 草野巧著/シブヤユウジ画(1999)『妖精』- 新紀元社
  • 井村君江(1993)『イギリス・妖精めぐり はじめての出会い』- 同文書院
  • キャロル・ローズ著/松村一男監訳(2014)『世界の妖精・妖怪事典』- 原書房
  • 井村君江(2008)『妖精学大全』- 東京書籍

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