妖精データベース

レッドキャップ

Red Cap
レッドキャップ

Illustrator : SHIZ

  • 名称 レッドキャップ(Red Cap、Redcap)
  • 別名 レッドコーム、ブラディー・キャップ、フィル・ラリグ
  • 分類 火と鉄、血を象徴する妖精
  • 生息地 崩れかけた古城、激戦地の後、残虐な事件があった場所。
  • 特徴 赤い帽子、長い爪と歯、人間の血の採集
  • 体長 小柄な老人
街を彷徨い襲い来る、
返り血に濡れた朱き妖精

レッドキャップとは―人を襲い血を集める妖精―

レッドキャップは、人間の血を集める妖精。彼らは夜中になると町に現れ、ターゲットを探して徘徊する。フラフラ歩いている人を見つけたかと思えば、かまいたちのごとく近づき、持っている斧で一撃してしまう。その速さは目にも止まらない。

彼らの目当ては人間の血。そう、レッドキャップは血を採集するために、犠牲になる人間を欲しているのだ。人間を一撃したレッドキャップが、その血をどのように集めるのか想像できるだろうか。

彼らが被る赤い帽子はレッドキャップのトレードマークの一つだが、なんと実は、人間の血を帽子に吸わせて集めるのだ。つまり、赤い帽子はこれまでの犠牲者の血で彩られ、殺めた人の数が多いほど、帽子もより赤く色づくのだ。

そして厄介なのは、レッドキャップが住んでいる場所。人間がいる場所にはどこでも住みつき、ターゲットを狙っている。特に、崩れかけた古城や戦争中に激しい戦いが行われた跡地、過去に残虐な事件があった場所には、レッドキャップが住みつきやすい。彼らが古城でたびたび目撃される理由は、築城の際に人柱となった人間の魂がレッドキャップとなったからだ、ともいわれている。

心霊スポットとして話題になっている廃墟などがあっても、面白半分で行くのはおすすめしない。このような場所に来る人間は、レッドキャップにとってはまさに飛んで火にいる夏の虫。突然頭上から大きな岩が落ちてきたら、彼に狙われている証拠だ。

レッドキャップは、自分のテリトリーに立ち入る者を容赦しない。早々に退散するのが身のためである。もしも廃墟に興味があるなら、日中の明るい時間に行くといい。もちろん、2人以上のグループで。

またレッドキャップに襲われても、命からがら逃れられた人がいる。この人が逃れられたのは、聖書のおかげだそうだ。聖書に書かれている言葉を唱えたところ、彼はひどく恐れ長い歯を1本だけ残してその場を去ったという。

有名なフレーズをいくつか覚えておくと、いざという時に役に立つかもしれない。もしくはレッドキャップから見えるように、十字架のネックレスを首から下げておくのにも身を守る効果がある。

斧を振りかざし帽子を赤く染める

この妖精を見分けるために、まずはレッドキャップの容姿を知っておこう。彼らの背丈は小柄な人間くらい腰がまるで老人のように曲がっているため、レッドキャップの表情を詳しく見ることはできない。

しかし大きくギラつく真っ赤な目に細い指、伸びっぱなしの長い爪と歯が特徴だ。レッドキャップの肌は、人間と同じような 色であることが多い。

一方で、「砂漠の様な黄土色のレッドキャップを見た」「藪のような緑色の肌をもつ個体を見た」という目撃情報もある。レッドキャップの服装について多くは語られていないが、鉄の靴と斧が目印。

レッドキャップは、常に片手に斧を持っている。斧の大きさはそれぞれで、薪割り用の斧を持っている個体もあれば、レッドキャップ自身よりも大きな斧を抱えている個体もいる。重く冷たい鉄の靴も、彼らのお気に入りだ。

レッドキャップは妖精なので、斧や鉄の靴を身に着けていても魔法の力で軽々と移動できるらしい。

そしてレッドキャップのシンボルといえば、頭に載った真っ赤な帽子を忘れてはいけない。先がツンと尖った帽子は、彼らのトレードマークとして世に知られている。先ほどもお伝えしたとおり、血液を集めるレッドキャップの必需品だ。

あたたかいレッドキャップ

彼らが人間の家に住んでいるとき、常に悪さをするわけではない。実は火の使いとしても知られるレッドキャップは、時には暖炉に火を灯して、人に見つからないよう、ひっそりと休息をとることもある。

レッドキャップが起こした炎は家中を暖めてくれるので、人間にとってもありがたい。というのも、寒い日などは一晩中レッドキャップの火でぬくもることができるからだ。朝起きると、家の中に木の枝が数本落ちているのに気づいたことがあるだろうか。それが、まさしくレッドキャップが火を灯した印だ。

夜中に家の外で出逢ってしまうと少々やっかいな妖精だが、実は悪さをすることは非常に珍しい。普段は悪さをせず、常に人間に寄り添って暮らしている。レッドキャップの習性をよく知っておけば、むやみに怖がる必要はないのだ。

民家に住みついているレッドキャップは、よく人間の仕事を手伝ってくれる。人間が眠りについている間に、家事や仕事をやってくれるので大助かりだ。

例えばレッドキャップは、稲刈りや精米をしてくれる。彼らは人間よりもずっとスピーディーに仕事をするので、朝起きたらすっかり作業が終わっていたなんてことも珍しくない。レッドキャップには、まじめに働く人に手を差し出す温かい一面もある。

レッドキャップは、いつも人間の近くにいる妖精だ。上手に付き合えば、悪いことはしない。彼らの様子に注意深く耳を傾け、夜は家の中で時間を過ごしていれば、きっと彼らとも仲良くやっていけるはず。

Column

レッドキャップに打ち勝つ!聖書のフレーズを覚えよう

レッドキャップを追い払う手段として、聖書の言葉が有効なことを紹介した。そこで、覚えやすくて簡単な聖書のフレーズをいくつかおさらいしておこう。

例えば、「Greater love has no one than this, to lay down one’s life for one’s friends.(友人のために自分の命を犠牲にすることほど、大きな愛はない)」や、「Even though I walk through the valley of the shadow of death, I will fear no evil, for you are with me.(もし絶望の日々を過ごそうとも、私は恐れない。神が私と共にいるから)」が分かりやすい。

隣人愛や人情、道徳観を強く心に持つ人は、レッドキャップに打ち勝つことができるのだ。そして、その心を素早く襲い来るレッドキャップに示してやるには、聖書のフレーズを口ずさむのがぴったりだ。

覚える時は、日本語でも英語でも、覚えやすい方を頭に入れておこう。ちなみに、家族や友人、恋人と歩く姿もレッドキャップは大嫌いで、見かけたその場で立ちどころに逃げてしまう。

誰かと外を出歩くだけでも、聖書に示されるような隣人愛や友愛の精神が十分伝わるのだろう。聖書にはあまり興味がない人も、これでひと安心だ。

― 関連書籍 ―

  • エドゥアール・ブラゼー著/松平俊久監修(2015)『西洋異形大全』― グラフィック社
  • 草野巧著/シブヤユウジ画(1999)『妖精』― 新紀元社

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