妖精データベース
ウンディーネ
Illustrator : ぽん太郎。
- 名称 ウンディーネ(Undine)
- 分類 水を司る四大精霊
- 生息地 清涼な水の流れる川や滝、湖等
- 特徴 水の流れを操る
- 体長 4歳前後の子供~成人程度
まるで燃える炎のようだ。
ウンディーネとは―水を司る四大精霊―
ウンディーネとは、水を司る妖精である。彼女の名を日本語に訳すと「波の乙女」。「波」を表すラテン語「unda」が由来だ。
ウンディーネは女性の妖精で、かわいらしい少女、もしくは美しい婦人の姿をしている。彼女らは澄んだ瞳を持ち、水の流れを思わせる髪は常にうるおい、つやめいている。その豊かな髪を水草で結い上げているウンディーネも多い。水草は、彼女たちのお洒落に欠かせないアクセサリなのだ。
ウンディーネたちは、水中を自由に泳ぎ回れるほか、水流や波を自在に操ることも出来る。 自然豊かな河川や湖畔のほとりに暮らしていて、水に近づく人間の様子をうかがっている。気に入った人間がいると、姿を現すという。
生活環境が影響?様々な姿のウンディーネ
ウンディーネは実に様々な姿で現れる。湖や小川など、人が時たま訪れる静かな水辺で見かけるウンディーネは、二本足で歩くものが多い。あまり大きな水の流れのない湖では、湖畔をのんびり散歩していることがある。
下半身が魚の尾びれのようになっているものは、泳ぎに特化したウンディーネだ。流れの速い所に住んでいるものがこの特徴を持つことが多いほか、水の中だけで暮らすウンディーネにも、この特徴が見て取れる。
ちなみに、地上での生活は二本足で、泳ぐときだけヒレを扱うハイブリッドなウンディーネもいるのだ。妖精が持つ変身能力を、生活に活かした良い例である。
ウンディーネの特徴は、脚とヒレの違いだけではない。ほかにも身を守るために固いウロコを発達させたものや、身体を水に溶け込ませたウンディーネも存在する。こちらは透き通る肌が目印だ。さらに彼女たちの中には、全身を神秘的な魚や蛇の姿に変える変身上手もいるという。
人と恋するウンディーネ
ウンディーネの中には、人間と恋に落ちて結婚するものも多い。ただし、ウンディーネと人間の恋には、破ってはいけない掟が存在する。
その掟とは、
- 水辺で夫に罵られてはならない
- 夫に浮気されてはならない
例えば、人間社会にうまく馴染めなかったせいで、夫に愛想を尽かされて浮気をされたウンディーネがいた。
また、水の精にいたずらされたことをウンディーネのせいにした夫が、水辺でウンディーネを叱りつけてしまったことで、やむなく水の世界に帰ったウンディーネもいた。
このように、夫からひどい扱いを受けたために悲しい恋の結末を迎えたウンディーネがいる一方で、一生を添い遂げたウンディーネも数多く存在する。彼女たちは、水の精であることを夫に明かし、掟を守るように約束したことで、円満な家庭を築くことが出来たのだ。
ウンディーネが幸せな結婚生活を送るには、夫の誠意が何よりも大切である。かけがえのない家族として、心からの愛情を注いでくれる夫であれば、掟が破られることなどないのだから。
水の精の見分け方
古今東西を問わず、水辺に棲まう妖精はウンディーネの他にも多数存在する。どれも有名な妖精であるが、いざ遭遇した時それらを一目で見分けるのは難しい。
ここで、ウンディーネと間違えやすい妖精について、少しおさらいしておこう。
- マーメイド
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日本では「人魚」と呼ばれるマーメイドは、海の中で暮らす存在だ。海中に独自の社会体制を設けているのが特徴で、同じ人魚や魚、亀などと共に生活を営んでいる。
マーメイドの姿は半人半魚。ウンディーネにも同じ姿のものがいるため、両者は間違われることが多い。しかし、二本足の姿で出逢ったならば、それはウンディーネが正解だろう。 マーメイドの場合は魚の下半身と引き換えに、魔女から二本足を授かることで唯一陸に上がることができる。ただし、それは歩くたびに激痛を伴うため、平然としてはいられないはずだから。
- セイレーン
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セイレーンは、人を惑わす歌声を持つ妖精だ。彼女たちは船乗りを誘惑し、船を座礁させて遊ぶ。しかし彼女たちは、人の少ない島や無人島に住んでいることが多いので、遭遇する確率は高くない。
それに、ウンディーネとの見分け方は比較的簡単だ。セイレーンには鳥のような特徴があり、その多くが翼を持っている。中には鳥の脚が生えているものもいる。ウンディーネとの違いは一目瞭然だろう!
- ルサールカ
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サールカはヴィーラとも呼ばれ、亡くなった若い女性の無念が精霊や幽霊となったものだ。彼女たちも人を魅了し、連れ去ることがあるという。生前の無念が昇華できずに、そのような行動を取るのだろう。
ルサールカは明るい月夜を好む。その時間帯に水辺で神秘的な存在を見かけた場合は、ルサールカの可能性が高いだろう。うっかり連れ去られることのないよう注意しつつも、生前の悲しみを思いやる心で向き合いたい。
ここで挙げた水の精たちは、ほんの一部にすぎない。ウンディーネを含む水の精は、水がある所ならばどこか近くに潜んでいるはずだ。その見分け方を覚えておくと、役立つ時がくるかもしれない。
Tips
ウンディーネたちの中には、川や湖の底に建てられた「水晶の宮殿」で暮らしているものもいるという。彼女たちは気に入った人間をその宮殿に招くことがあるが、宮殿で過ごす1分は地上での1日に相当する。滞在時間には要注意だ。
― 関連書籍 ―
- 世界の妖精研究会編(2016)『世界の妖精全書』- 日文PLUS
- アンナ・フランクリン著/井辻朱美監訳(2004)『図説妖精百科事典』- 東洋書林
- ヴィック・ド・ドンテ著/荒俣宏監修(1993)『人魚伝説』- 創元社
- キャロル・ローズ著/松村一男監訳(2014)『世界の妖精・妖怪事典』- 原書房
- 井村君江(2008)『妖精学大全』- 東京書籍