妖精データベース

エルフ

Elf
エルフ

Illustrator : 真崎 零

  • 名称 エルフ(Elf)
  • 分類 人型の妖精
  • 生息地 深い森、丘、洞穴、古代の墓
  • 特徴 先のとがった長い耳、魔法や弓の扱いに長ける
  • 体長 男女とも高身長、人間の成人かそれより少し高い
深き森に棲む紳士淑女は、
弓と対話で故郷を守る

エルフとは―森と共に生きる妖精―

エルフの見た目の特徴

エルフは、森に生息する代表的な妖精だ。彼らの一番の特徴は、長くとがった耳である。この長い耳はやや上向いているものが多く、人間の耳と比べるとその差は歴然だ。

男女ともに身長が高いことが多く、気品がありながらも物腰柔らかな風貌をしている。寿命が長いことでも知られ、千年以上生きるものも少なくない。彼らは普段、花や草があしらわれたナチュラルな服を身に着けているが、戦いや狩りの時になると肩や腹に防具を着けて、弓矢を武器にしている姿がよくみられる。

エルフの王のイメージ画像
エルフの王のイメージ。イングランドにおいて「エルフ」という言葉は、「集団で生活する妖精」の総称としても用いられる。
(出典:Adobe Stock)

エルフは社会性が高く、中には独自の王国を形成しているものもある。王によって統治されるエルフたちは村単位でコミュニティを形成し、森の奥深くでひっそりと生きていることが多い。森の他にも、丘や洞穴、古代の墓など、あまり人が訪れない静かな場所にはエルフの村が存在する可能性がある。

このように人里離れた環境で育つエルフたちの中には排他的なものもいる一方で、人間と親しく接したり、人間社会の中に溶け込んで生活したりする者もいる。特に若いエルフは、生まれ故郷を離れて、人間にまぎれて都会で暮らす者も増えているという。

人の血を受け継ぐエルフも!エルフの様々な種族

ハイエルフとハーフエルフとダークエルフの3種類のエルフのイラスト

一口にエルフといっても、様々な種族が存在する。同じエルフでも、外見や性格には違いがあるのだ。ここに挙げるものは全てのエルフではないが、代表的な種族を解説しよう。

ハイエルフのイラストハイエルフ
王家や名家出身のエルフがこう呼ばれ、リーダーとして振舞うことが多い。非常に強力な魔法を使うことができ、リーダーとしての彼らは、皆の中で光り輝いている。
ハーフエルフのイラストハーフエルフ
主にエルフと人間の間に生まれた者のことである。ハーフエルフは人間社会の中で暮らすものが多い。彼らの中の半数ほどが、エルフの特徴であるとがった耳を親から受け継ぐという。
ダークエルフのイラストダークエルフ
エルフ界の戒律や信仰を破り、一人で各地を転々とするエルフ。褐色の肌は多くに共通し、髪の色は白髪・銀髪の他、黒や青色で描かれることが多い。彼らは、訪れた町や村の地下に隠れ住みながら、賞金稼ぎで生計を立てている。高い報酬を目当てに怪物の退治など危険な任務を請け負うことも少なくない。

北欧の伝承に登場するダークエルフたちは、古ノルド語で「闇のエルフ」を意味する「デックアールヴ(Dockalfar)」「スヴァルトアールヴ(Swartalfar)」と呼ばれていた。

時は流れ、現在では英訳された「ダークエルフ」という呼称が主流となっている。敵対、戦闘といったイメージが他のエルフより強いため、現代のファンタジー作品などでは活躍の場も多く、たびたび目にすることもあるのではないだろうか。

なお、エルフたちはその種族を問わず、人とは明らかに異なる身体的な特徴を必ず持っている。体のどこにどのような特徴があるかはエルフによって様々だが、「背中に穴のような窪みがある」、「長い牛の尾を生やしている」といった特徴を持つ個体もあるとのことだ。

しかし彼らは、こうした証を徹底的に隠すため、実際に目にしたことのある人間はほとんどいない。

破壊されゆく森を守り、癒す

エルフたちは、現代に至るまで森の守護者として活躍してきた。時には森を荒らすならず者を成敗し、時には災害で傷を負った森を癒してきた。

聡明な彼らは、森がなくなれば水が枯れ、大地が生命を育めなくなると理解しているのだ。だが、エルフたちが守る森や自然は、人間の手によって窮地に立たされている。

フェアリーサークルのイメージ画像
エルフたちは、月の光を浴びながら草の上でダンスをすることを好む。彼らが踊った後には、キノコ等の植物でできた輪っか「フェアリーサークル」が残されるという。
(出典:Adobe Stock)

森林はすさまじい勢いで伐採され、エルフたちは守ってきた森を失いつつある。かつては森を破壊する人間と戦ったり、人間の邪魔をしたりするエルフが多かったが、最近では人間と対話を重ねて破壊をやめさせる術を身に着けたようだ。

長年経験と知識を培ってきたエルフが森の重要性を説くことによって、改心する人間が徐々に増えてきているという。

エルフと人間の対話はまだ始まったばかりであるが、お互いに知恵を出し合うことによって、大切な森を次世代に受け継ぐことが出来るだろう。

Column

百発百中!驚異的な弓の腕前

エルフの武器といえば弓矢である。エルフたちは子供のころから弓術の訓練を受けているので、その扱いに関しては人間とは比較にならないほど熟練している。

しかも視力にも優れており、人よりも遥か遠くまで見渡せるだけでなく、ほんのわずかな明かりさえあれば暗闇でも不自由なくものを見ることができる。そんな彼らが、狙った的を外すことは決してないのだ。

エルフの少女のイメージ画像
弓を射るエルフの少女。狩りのため、そして森を守るために、彼らは日々の鍛錬を欠かさない。
(出典:Adobe Stock)

さらに、エルフの弓から放たれた矢には特殊な魔力がこめられており、岩に突き刺さるほどの威力がある。しかし、矢を抜いてみると岩肌のどこにも傷がついていないというから驚きだ。

もしもこの矢に人間が当たってしまうと、全身が激痛に襲われて必ず倒れこんでしまう。このことからイギリスの人々は、突然の病に倒れたり、不慮の事故で転倒してしまうことを「エルフの一撃が当たった!」(英語では「elf shot(エルフ・ショット)」)と表現する。

とはいえ、エルフたちは警告もなしに罪のない人間に弓矢を向けることはないから安心してほしい。争いごとを嫌う彼らが弓を放つのは、狩りをする時と森を荒らすものを退治しようとする時だけである。

ちなみに、時折エルフが作った矢じりとおぼしきものが見つかることがある。残念ながらそのほとんどは石器時代に人間が作った矢じりだが、中にはエルフが作った本物の矢じりも混じっているのだとか。エルフが作った矢じりは、ベルギー産の火打石にそっくりな黄色い石、もしくは黒光りする石から出来ていて、身に着けるだけで災いを遠ざけてくれるお守りになると伝わっている。

Tips

エルフたちの結婚式の多くは、ライムの樹の下で執り行われるという。ライムの花言葉は「あなたを見守る」。
白く愛らしいライムの花に見守られながら、エルフたちは夫婦となり、新たな生活への一歩を踏み出すのだ。

― 関連書籍 ―

  • エドゥアール・ブラゼー著/松平俊久監修(2015)『西洋異形大全』― グラフィック社
  • ポール・ジョンソン著/藤田優里子訳(2010)『リトル・ピープル』― 創元社
  • 水木しげる(1996)『カラー版 妖精画談』― 岩波新書
  • 草野巧著/シブヤユウジ画(1999)『妖精』― 新紀元社
  • 井村君江(1987)『妖精の国』― 新書館
  • 井村君江(1993)『イギリス・妖精めぐり はじめての出会い』― 同文書院
  • 井村君江(1998)『妖精の国の扉 フェアリーランドへ導く九つの鍵』― 大和書房
  • トニー・アラン著/上原ゆうこ訳(2009)『ヴィジュアル版 世界幻想動物百科』― 原書房

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